スタートアップにとって、自社の魅力をどう外部に伝えるかはとても重要なテーマです。製品やサービスに自信があっても、その価値を相手に正しく伝える「ストーリー」がなければ、世の中にはなかなか届きません。
今回は、「そもそも広報って何から始めればいいの?」「うちの会社の強みってどこだろう?」というスタートアップの広報初心者や、これから発信を始めたいと考える経営者の方に向けて、自社の“強み”を活かしたストーリーの作り方をご紹介します。
なぜ「ストーリー」が必要なのか
広報活動の中心にあるのが「ストーリー」です。企業の成り立ち、プロダクトが生まれた背景、創業者の思い。こうした“語れる内容”があるからこそ、メディアや顧客の心に響く情報発信ができます。
例えば、同じようなサービスを提供する2社があったとしても、「なぜこのサービスを始めたのか」「誰のために、どんな課題を解決したいのか」といった文脈があるだけで、受け手の印象は大きく変わります。
ストーリーは、単なる宣伝ではありません。「会社の理念」や「社会とのつながり」を伝えることで、信頼や共感を生む力があります。特にスタートアップの場合は、まだ実績が少ない分、「なぜこのビジネスをやっているのか」が重要なアピールポイントになります。
ストーリー作りの第一歩、「原点」に立ち返る
ストーリーを作るには、まず自社の“原点”を掘り下げるところから始めましょう。
例えば、以下のような問いを投げかけてみてください。
- 創業のきっかけは何だったか?
- 解決したかった課題は何か?
- なぜ他の人ではなく、あなたがこの事業をしているのか?
- どんな価値を社会に届けたいと思っているか?
この問いに対する答えは、きっと創業者や会社の中にあります。たとえば、「フリーランスの友人が請求書の管理で苦しんでいた」という経験から、請求業務を自動化するSaaSを立ち上げた、というような具体的なエピソードがあれば、それは立派なストーリーの種です。
外部に向けて伝えるためには、その原点を言葉にできることが大切です。
自社の「強み」を見つけるための視点
では、どうやって自社の“強み”を見つければよいのでしょうか?以下のような3つの視点から整理してみると、見えてくるものがあります。
1. お客様からの声(第三者の視点)
既存のお客様から「これが便利だった」「他社と違う点だと思う」と言われたことはありませんか? 実際の利用者が感じた魅力には、主観では気づけない“強み”が隠れています。
2. 社内で大切にしている価値観(内側の視点)
「スピード感」「誠実な対応」「地域密着」など、チームとして大事にしている価値観は、自社らしさを形づくる要素です。それを言語化することで、他社との差別化につながります。
3. 他社と比べたときの特徴(相対的な視点)
似たようなサービスは他にもある中で、「あえて自社が選ばれている理由」は何かを考えてみましょう。たとえば「小規模ながらも柔軟に対応できる」「エンジニアが直接サポートしてくれる」など、他社にはない点は立派な強みです。
ストーリーに「人」を登場させる
良いストーリーには、必ず“人”が登場します。製品や技術だけでなく、それをつくった「人」の姿があると、ストーリーは一気にリアリティを帯びてきます。
例えば、創業メンバーがかつて経験した失敗や葛藤。それを乗り越えて今のサービスがある、という流れがあるだけで、読み手はぐっと引き込まれます。
また、社員一人ひとりの想いに焦点を当てるのも効果的です。「入社してすぐにプロジェクトを任された若手メンバーの成長ストーリー」や、「地方からリモートで参加するエンジニアの働き方」なども、会社の価値観や文化を伝えるストーリーになります。
“人”のストーリーには、共感を呼びやすい力があります。どんなに規模が小さくても、そこに熱意や挑戦があれば、それだけで十分に伝える価値があります。
ストーリーの伝え方のコツ
せっかく良いストーリーがあっても、伝わらなければもったいないですよね。そこで、ストーリーを外部に発信する際のポイントをいくつかご紹介します。
● 短くて、わかりやすい言葉を使う
専門用語やビジネス用語に頼りすぎず、中学生でも理解できるくらいの言葉を意識してみましょう。
● 一文一義で、読みやすく
一文に情報を詰めすぎると読みづらくなります。文章を分けることで、テンポも良くなります。
● 写真やビジュアルを加える
ストーリーの中に、実際の現場の写真や社員の顔写真があると、より伝わりやすくなります。文章だけでは伝わらない雰囲気を補ってくれます。
● ターゲットを意識する
メディア向けに出すのか、採用候補者向けなのか、お客様向けなのか。それによって、強調する内容やトーンも変えていきましょう。
まとめ
小さな企業やスタートアップだからこそ持っている「ユニークな背景」や「熱量のある想い」こそが、強い武器になります。今回ご紹介したことを意識することで、あなたの会社にしかない“伝える価値”が見えてきますよ。