ファクトブックとは
今回は、広報活動を始めるにあたってぜひ知っておいてほしい「ファクトブック」についてご紹介します。
ファクトブックとは、会社の基本情報や実績、ビジョン、提供サービスなどを一冊にまとめた資料のことです。主に報道関係者やパートナー企業、投資家などに向けて、自社を正しく、かつ魅力的に伝えるために活用されます。いわば、会社の“プロフィール帳”のようなもの。メディアに取り上げてもらいたい、提携先を見つけたい、採用を強化したいなど、目的はさまざまですが、ファクトブックはその第一歩として大きな力を発揮します。
特にスタートアップにとっては、まだ知名度が低く、誤解されたり正しく理解されなかったりするリスクがあるため、情報の土台としてのファクトブックがあると非常に安心です。
ファクトブックと会社案内との違い
「会社のことをまとめる資料なら、会社案内と同じでは?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。確かにどちらも企業の情報を伝える役割を担っていますが、目的や使われ方に違いがあります。
会社案内は、主に営業や採用などで使われるもので、ターゲットに応じてやや脚色された表現やビジュアル的な演出が加えられることが多いです。ブランディングを意識した仕上がりであることも特徴です。
一方、ファクトブックは、もっと“事実ベース”で作られます。情報の正確性や網羅性が重視され、内容に誇張はありません。メディア関係者が取材時の参考資料として利用することもあるため、あくまで客観的かつ信頼できる情報源であることが求められます。たとえば「◯年に創業し、累計で◯件の導入実績がある」といった具体的なデータや実績を中心に構成されます。
ファクトブックとプレスキットとの違い
混同されがちなものに「プレスキット」があります。どちらも広報で活用される資料ですが、その役割は異なります。
プレスキットは、特定のニュースリリースやイベントに際して用意される短期的・用途限定の資料です。例えば、新サービスのローンチに合わせて記者に渡す資料セットがこれにあたります。会社概要、サービス説明、代表コメント、画像素材などが一式になっていて、まさに“そのニュースを報じてもらうためのキット”です。
一方でファクトブックは、もっと長期的・恒常的に使える資料です。定期的にアップデートしながら、企業活動全体を紹介する基礎資料として活躍します。つまり、プレスキットはスポットライト、ファクトブックは背景となる舞台のようなもの。どちらも重要ですが、まず土台となるファクトブックがしっかりしていることが、広報活動全体の信頼性を高めることになります。
ファクトブックの具体的な内容
では、ファクトブックには具体的にどんな内容を盛り込めばいいのでしょうか。以下に基本的な項目をご紹介します。
- 会社概要(社名、設立年、所在地、代表者、資本金など)
- 沿革(年表形式で主な出来事や実績)
- ミッション・ビジョン・バリュー(企業が大切にしている考え)
- 事業内容(サービス・プロダクトの紹介)
- 業界のトレンド・市場分析(同業他社との比較など)
- 実績・データ(導入社数、ユーザー数、成長率、受賞歴など)
- メンバー紹介(経営陣や主要メンバーのプロフィール)
- ユーザーの声(外部からの評価)
- 問い合わせ窓口
必要に応じて、コーポレートロゴや代表写真、プロダクト画像なども添えると、視覚的にも伝わりやすくなります。
ファクトブック作成時のポイント
ファクトブックを作る上で、いくつか大切なポイントがあります。まず一つ目は「正確性」です。ここに記載された情報が外部で引用される可能性が高いため、古い情報や誤ったデータを掲載しないように注意が必要です。
次に「定期的な更新」です。一度作って終わりではなく、会社の成長や変化に応じて、半年に一度、あるいは少なくとも年に一度は見直すようにしましょう。
また「読みやすさ」も大切です。細かすぎる情報を詰め込むのではなく、誰が読んでも理解できるように構成を工夫しましょう。図表や箇条書きをうまく使うことで、視認性を高めることができます。
最後に、スタートアップならではの“物語”を盛り込むのも効果的です。創業時のエピソードや課題をどう乗り越えてきたかなど、あなたの会社ならではのストーリーが、読み手の共感を呼び、印象を強めてくれます。
まとめ
広報活動をこれから始める、もしくは始めたばかりのスタートアップにとって、ファクトブックは心強い武器になります。会社の姿を正確に、そして魅力的に伝えるための存在として、多方面で活躍してくれるでしょう。
まだ世の中に知られていないからこそ、自ら発信する情報の整備が重要です。まずは社内で情報を整理し、今ある資料や数字を見直すところから始めてみてください。
ファクトブックを通じて、あなたの会社の「今」と「これから」をしっかりと伝えていきましょう!