広報の仕事とは、プレスリリースを作成して企業の情報をメディアに届け、取材や記事掲載といった形で社会との信頼関係を築くことが基本です。
しかし近年では、情報の受け手が多様化し、メディアに加えて一般生活者や取引先、求職者など幅広いステークホルダーに直接リーチできる手段として、SNSの活用が注目されています。
SNSはあくまで広報活動を補完する「サポートツール」ですが、その拡散力や即時性を「広報視点」でうまく活用することで、プレスリリース単体では届きにくい相手にも企業の姿勢や日々の取り組みを届けることができます。
本記事では、広報初心者でも取り組みやすいSNSの活用術を、具体的なステップや注意点を交えてご紹介します。
SNSを使う意味
SNSは単なる「宣伝ツール」ではなく、メディアリレーションズを補完する広報的な情報発信ツールとしても活用できます。広報視点でSNSを使う意味は、大きく3つに分けられます。
① リーチの拡大
プレスリリースやイベント情報などを、既存メディアに取り上げてもらうのは簡単ではありません。一方で、SNSなら自社のフォロワーを通じて、情報を拡散し、思いがけない層にリーチすることが可能です。例えば「社員が自社の投稿をシェア」するだけで、周囲の友人や知人にも情報を届けることができます。これは、広報活動の一環としても非常に有効です。
② 信頼感の醸成
定期的に情報発信している会社は、「見える」「動いている」印象を与えることができます。例えば、地域のイベントに参加している様子や、社員同士の自然な交流が見える投稿は親しみやすさが伝わり、企業に対する距離感がぐっと縮まります。
③ 新たな接点づくり
SNSは、「問い合わせ」の前段階として、多くの人が会社のことを知る“入り口”になります。特に、スタートアップはまだまだ認知度が低いため、SNSを通じた接点づくりは欠かせません。
最初にやるべき3つのこと
① 投稿ジャンルの型を決める
「何を投稿すればいいかわからない…」という悩みを防ぐために、ジャンルを大まかに決めておくのがおすすめです。例えば、次のような3本柱を用意すると無理なく続けられます。
- 事例紹介(導入事例・お客様の声)
- 活動報告(イベント・地域活動・日常風景)
- お知らせ(サービス開始・採用情報など)
それぞれバランスよく発信することで、会社の雰囲気も伝わりやすくなります。
② 投稿スケジュールを「無理なく固定」
週に1回、○曜日に活動報告、隔週で事例紹介、など自分たちの業務に合ったペースで決めておきましょう。最初は「月3回更新」を目安にし、それが習慣になったら増やしていくくらいの方が、長く続きます。
③ 反応の出た投稿は「広報ネタ」として活用
SNSで「いいね」や「リポスト」が多かった投稿は、他の広報活動にも応用できます。例えば、その内容を深掘りしてブログ記事にしたり、プレスリリースの切り口にするなど、「広報の素材集め」として活用しましょう。
よくある失敗例
SNS運用に慣れていないと、ついやってしまいがちな「失敗例」もあります。
売り込みすぎる営業投稿
SNSはコミュニケーションの場です。毎回「新商品出ました!」「キャンペーンやってます!」といった一方向的な告知ばかりだと、見ている人にとっては飽きやすく、距離感を感じさせてしまうこともあります。お知らせは必要ですが、7〜8割は“日常”や“共感”を意識した内容にしましょう。
担当者の個人的すぎる内容の投稿
社内の広報担当者が「今日はランチで〇〇に行きました」といった個人色の強い投稿ばかりになると、会社のSNSとしての役割がぼやけてしまいます。人柄を伝えるのは大事ですが、「この投稿は誰のために?何の目的で?」という視点は忘れないようにしましょう。
社内で協力を得るには
SNSは担当者1人で完結するものではありません。特に現場の情報が必要な場合、社内の協力が欠かせません。以下の工夫をしてみましょう。
「写真を1枚送ってもらうだけ」でOKと伝える
「SNSに載せるから、文章と写真をセットで出してね」と頼むと、負担に感じてしまいます。まずは「今日の様子、1枚写真を撮って送ってもらえるだけで助かります!」とハードルを下げるのがコツです。
投稿後に「ありがとう!」と一言共有
「この投稿、○○さんの写真のおかげでとても反応よかったです!」など、感謝を伝えることで、社内の人も「また協力しよう」と思ってくれます。広報は“社内コミュニケーション”でもあるのです。
まとめ:SNSは「ついで」ではなく「接点づくり」
SNSは、広報の“主役”ではなく“補助役”ですが、その補助がうまく引かれていると、会社の輪郭がよりくっきり見えるようになります。
日々の投稿は、小さな積み重ねかもしれません。しかし、会社の動きや人の温度感が伝わる投稿は、確実に誰かの心に届いています。スタートアップや小さな組織だからこそ、SNSを「ついでにやる」のではなく、「接点をつくる場所」として大切にしてみてください。
広報初心者でも、ルールを決めて、社内のメンバーと協力しながら、少しずつ続けていけば大丈夫です。最初の一歩から、信頼の輪は広がっていきますよ!