スタートアップや中小企業にとって、自社のサービスや取り組みを世の中に知ってもらうための重要な手段の一つが「プレスリリース」です。しかし、広報経験がないと「何を書けばいいの?」「フォーマットは決まっているの?」と悩むことも多いのではないでしょうか。
この記事では、広報初心者や広報専任がいないスタートアップの経営者向けに、基本的なプレスリリースの書き方とテンプレート、さらに注意点や応用のヒントをご紹介します。これから広報を始めたい方にとって、実践的な第一歩になるはずです。
そもそもプレスリリースとは
プレスリリースとは、企業がメディアに向けて発表する「公式なお知らせ」です。新商品の発売、サービスの開始、資金調達、人事発表、イベント開催など、ニュース性のある出来事を広く知らせるための文書です。
重要なのは、プレスリリースはメディアの方々が記事にしやすいように構成されているという点です。単なる宣伝とは異なり、「第三者(メディア)がニュースとして扱いたくなる情報」であることが求められます。
そのため、「誰に向けて」「何を」「どんな背景で」「どんな影響があるのか」を簡潔に伝える必要があります。プレスリリースの目的は、「取材につなげること」や「記事掲載による信頼の獲得」であることを意識しましょう。
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基本のプレスリリース構成とテンプレート
基本的な構成とテンプレートを一つご紹介します。
【基本構成】
- タイトル(見出し) …何の発表かが一目で分かるキャッチーな見出しを
- リード文(冒頭の要約) …「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ」などの5W1Hを簡潔に
- 本文(詳細説明) …背景や経緯、具体的な内容、他社との違いなどを詳しく
- 会社情報(会社概要) …会社の基本情報や事業内容など。
- 問い合わせ先 …担当者の連絡先(メール・電話)を記載。
【テンプレート例】
報道関係者各位
プレスリリース
2025年〇月〇日
〇〇株式会社
地方や高齢世帯にも対応、家事代行アプリ「〇〇」全国展開へ
~地域課題と家事負担を同時に解決するスマート支援~
〇〇株式会社(本社:東京都〇〇区、代表取締役:〇〇〇〇)は、2025年〇月〇日、家事代行マッチングアプリ「〇〇」の全国展開を開始したことをお知らせいたします。本サービスは、都市部の共働き世帯だけでなく、高齢者世帯や地方居住者にも対応した“地域密着型スマート家事支援”を特徴としています。
「〇〇」は、家事代行を必要とする利用者と、スキルを持つ登録スタッフをアプリ上でマッチングするサービスです。従来の都市部中心・中間業者依存型の家事代行サービスとは異なり、地方自治体や地域団体と連携しながら、地域に根ざした支援ネットワークの形成を進めている点が大きな特徴です。
今回の全国展開にあたり、以下の新機能および新方針を導入いたしました。
- 地方・過疎地への対応強化:地域の生活支援NPOやシルバー人材センターと連携し、家事代行スタッフの登録・派遣体制を拡充。
- 高齢者向けサポート機能:アプリ非利用世帯向けに電話予約や家族代行管理機能を追加。
- マッチングの質向上:AIによる作業内容・人柄・時間帯など多軸スコアリングによる相性重視の推薦機能を搭載。
- 自治体連携モデルの構築:複数自治体との実証実験を通じ、見守り支援や買い物代行などの複合型サービスとして運用。
本サービスを通じて、家事代行という民間サービスを地域福祉の一部として捉える、新しい生活支援モデルの実現を目指しています。
【会社概要】
会社名:〇〇株式会社
所在地:東京都渋谷区〇〇〇〇
代表者:〇〇〇〇
設立:2023年
事業内容:家事代行マッチングアプリの開発・運営
【本件に関するお問い合わせ先】
〇〇株式会社 広報担当:〇〇
TEL:03-xxxx-xxxx
Email:press@example.com
テンプレートを使うときの注意点
インターネットで調べると、さまざまなプレスリリースのテンプレートが見つかります。それらは「基本の型」としてとても便利ですが、すべてのリリースが同じ形でいいとは限りません。特に以下のような場合には、カスタマイズが必要です。
- 業界用語が多く、一般読者に伝わりにくい → 噛み砕いた表現にしましょう。
- 読者(記者)の関心が違う場合 → メディアのジャンルに合わせて内容を調整しましょう。
- イベントやキャンペーンなど、時期限定の内容 → 早めに配信し、スケジュール感を重視しましょう。
また、タイトルが曖昧すぎると読まれません。「何が新しいのか」「社会にどんなインパクトがあるのか」を強調すると、メディアの目にも止まりやすくなります。
目的やメディアに合わせた「カスタマイズ」が成功のカギ
プレスリリースは一方通行の情報発信ではありません。メディアに「取り上げてもらう」ことが目的です。したがって、リリースは発信先のメディア特性や記者の関心を意識して調整する必要があります。
例えば:
- ビジネス誌向け:市場の動向や事業成長性、数字データを多めに。
- 生活情報誌向け:ユーザーの声や体験談、生活の変化にフォーカス。
- 地方メディア向け:地元にどう貢献するか、地域との関わりを明記。
さらに、「記者が記事にしやすい構成」になっていることも大事です。説明が長すぎる、専門用語だらけ、事実より感想が多い…といったリリースは敬遠されがちです。
よくある失敗例とその対策
最後に、初心者がつまずきやすいポイントと、避けるためのコツをご紹介します。
失敗例①:ニュース性がない
→単なる商品紹介では、記事にはなりません。背景や意義、社会的な文脈を添えることで「ニュース」に変わります。
失敗例②:一方的な宣伝になっている
→プレスリリースは広告ではありません。客観性を意識しましょう。
失敗例③:問い合わせ先が曖昧・抜けている
→取材したくても連絡が取れないとチャンスを逃します。必ず担当者の連絡先を明記しましょう。
失敗例④:PDFだけの添付
→テキストでコピペできるよう、メール本文にもリリースを記載しておくと、スムーズに読んでもらえることが多いです。
まとめ
プレスリリースは、「型」があるからこそ初心者でも取り組みやすい広報手段です。一方で、その「型」に頼りすぎてしまうと、せっかくのニュースが埋もれてしまうこともあります。
基本を押さえたうえで、伝えたい相手(=メディアや読者)に合わせたカスタマイズを意識すれば、リリースの効果はぐっと高まります。
まずは今回ご紹介した内容をもとに、自社の情報を整理しながら、何か一つプレスリリースを書いてみましょう。発信を重ねるごとに、きっと「伝わる広報」ができるようになりますよ!