みんなが混同する「広報」と「広告」の違い ー PRってなんだ?

広報お役立ちブログ

質問:「PR」という言葉を聞いたら、どういうことをイメージしますか?

  1. 就職の面接で問われる「自己PR」?
  2. インスタで新商品を紹介すること?
  3. お店の前に貼るポスターのこと?
  4. 販促プロモーションのこと?

答え:いずれも「PR」本来の意味とは異なります。

ネット上ではさまざまな解釈があり、まるっと上記すべてPRとくくっている人もいらっしゃると思います。
しかし、PRの本質的な意味でいうと、上記はいずれも異なると思います。

たとえば「自己PR」。
これは自分の長所や強みなどを一方的に「アピール」するという意味で使われることが多く、上記のインスタやポスターも基本的に自社の商品などの「宣伝(広告)」と言えます。

絶対にダメ!というわけではないのですが、「PR」本来の意味を理解して「広報」と「広告」の違いを整理することで、広報業務として「プレスリリースを書く」とき、何をどのように書けばよいのかがより明確になると思います。

そこで今回は、みなさんがよく混同する「広報」と「広告」の違いを簡単に解説してみたいと思います。

PRってなんだ?

そもそも「PR」とは「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」の略で、直訳では社会との関係性で、日本語では「広報」と訳されます。

では、PRとはどういうものなのでしょうか?

世界各国で広報学の標準的な教科書として高い評価を得ている「体系 パブリック・リレーションズ」によると

「パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。」

と定義されています。

国際PR協会による定義では

「信頼できる倫理的なコミュニケーション手法を通し、組織と組織をとりまく公衆との間に関係と利益を築くため、意思決定の管理を実施すること」

となっています。

また、日本広報学会が2023年に発表した「広報」の定義は

「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。」

となっています。

いずれも簡単にまとめると「社会と良好な関係性を構築するための合意形成のプロセス」と言えるでしょう。

しかし、日本ではPR(広報)を単なる「宣伝」や「広告」という意味で捉えていることが多く見られます。
この誤解が生じる背景には、以下の要因があるのではと思います。

  • 歴史的な経緯
    第二次世界大戦後にパブリックリレーションズの概念が日本に入ってきた時、さまざまな適訳案が検討され「広報」に落ちつくも「広く報道する」というニュアンスが残った。また、その後「PR」という略語が一般化していったため、「宣伝」や「広告」の同義語的な使われかたが浸透していった。先にあげた「自己PR」などがその例。
  • 近年のマーケティング戦略
    マスメディア全盛期の時代、広報といえばメディアへの情報提供(プレスリリースなど)が中心で「広告」とは活動領域が違うと認識されていた。しかし、デジタル時代に情報伝達手段の幅が格段に広がり、それに応じて全方向で一貫したマーケティング戦略が主流になる過程で、広告と広報が連携し、それぞれの領域があいまいになってきた。

広告や広報の定義はネットにたくさん書かれているのでそれらを参考にしてみるものよいと思います。
ただ、僕の個人のイメージですが、世間一般の認識で「PR」「広告」「広報」というのは次のような括りで捉えられるのではないかなと思っています。

※「クイズに答えてハワイ旅行プレゼント」といったプロモーション、キャンペーン=販促もPRとして認識されることも多いのでこの括りに入れました。

「広報」と「広告」の違いとは

さて、「広報」と「広告」は、どちらも企業が情報を発信し世の中に知ってもらうための活動ですが、その手法や目的には大きな違いがあります。

  • 情報発信の主体と手法
    • 広報はメディア:企業が自社の情報をメディアに提供し、記事として取り上げてもらうことを目指す
    • 広告は自社:企業が自らの判断でメディアの広告枠を購入し、自社の情報を直接消費者に届ける
  • 情報発信の目的
    • 広報は、企業イメージ向上や社会的責任の履行などが目的、長期的な視点でのコミュニケーションを重視
    • 広告は、製品やサービスの販売促進を主な目的とし、短期的な効果を重視することが多い

広報で発信される情報は、第三者であるメディアによって検証され、記事として掲載されるため、一般的に高い信頼性があると見なされます。
広告は、企業が一方的に発信する情報なので、情報をより魅力的に見せようとする演出が加わるので、その内容については注意深い判断を要するケースもあります。

広報とは究極の「自己PR」!?

今も昔も「口コミ」情報というのは人の興味関心を引きやすいコミュニケーション手法の一つです。
しかし、ステマやサクラコメントなどが氾濫する現代では、何を信じていいのかわかりづらくなっています。
そんな中でも、誰か信頼ができる人からの情報のほうが耳を傾けて信じられますよね。
「第三者であるメディアによって検証され、記事として掲載される」という広報活動は、まさに自分(企業)を信じてもらうための間接的な「究極の自己PR」と言えるかもしれません。

人の行動でたとえると、こんな感じでしょうか?

これが「広告」です。

これが「広告」です。

もちろん、広報活動はメディアによる信頼性のある記事掲載を目指すこと以外にも、ステークホルダーとの関係性構築や採用広報、危機管理広報、社内広報とさまざまな活動領域があります。
今回は「広告」との違いという点で、このような捉え方をすることで「広報」が少し明確になれば幸いです。

※ 上記の説明は、一般的な概念と筆者個人の見解です。企業や業界によって、広報と広告の役割や定義が異なる場合があります。

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